【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「それより・・・なんでお前まで来るんだよ、ミカサ」
エレンは自分のことを棚に上げ、隣にいるミカサに鬱陶しそうな目を向けた。
幼馴染で同期でもあるミカサは、すでに部署でも一番の成績を収めている。
そして、エレンが日本に転勤すると聞いた瞬間、自身もついていくと言い出した。
「私がいないとエレンは必ず問題を起こす」
「は? オレはお前の弟でも子供でもねぇぞ!」
「それに・・・日本は私のお母さんの故郷」
日本人との混血であるミカサは、当然のことながら日本語にも堪能だ。
日本語はこれから勉強する予定のリヴァイにとって、エレンよりもずっと心強い部下となるだろう。
しかし、どうも・・・このミカサ・アッカーマンとは馬が合わない。
エレンに対して厳しい態度を取っているのが気に入らないのか、何かにつけて反抗してくる。
「チッ・・・うるせぇな、お前ら」
二日前に日本へ到着したばかりで時差ボケ気味である上、長距離移動で全身がダルい。
それでもリヴァイは日本に来る前からずっと、この地に来たかった。
それはこの時期でなければならない。
だからこうして、東京からはるばる新幹線に乗ってここまでやってきた。
「へぇ、ここがリヴァイさんの言っていた場所かぁ」
「そうだ」
エレンが目の前に広がる、雄大な景色に顔を輝かせた。
幼い頃、偶然目にした一枚の絵葉書。
日本の古都の山が見せる、春爛漫な美景の写真だった。
あれからずっと、その景色を見たいと願っていた。
否、絶対に行かねばならないと思っていた。
何が自分をそんなに掻き立てるのかは分からなかったが・・・
「予定を早めてもこの時期に日本に来たのは、これを見たかったからなんですね」
エレンが山一面に広がるその花を見て、目を細める。
隣にいるミカサも心打たれるものがあるのか、静かな瞳をそちらに向けたまま。
「ああ・・・この時期に、僅かな期間だけ咲くんだそうだ」
「そうなんですか・・・」
“これはいったい何という花ですか”と、エレンが言いかけた瞬間。
同じようにこの花を愛でるために集まった人混みの向こうから、能天気な声が聞こえてきた。