【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第5章 Eye of the Silver Wolf
この感覚は、前にも味わったことがある。
こうして、目の前にいる人間に死の足音が近づいた時だった。
そう、あの冬山で感じたものと同じ視線。
気高く、美しい野生の姿がフラッシュバックする。
「おお・・・かみ・・・」
無意識にサクラがその名を呟いた瞬間。
銀の風が吹いた。
馬?
違う、立体機動のワイヤーだ。
サクラは振り返った。
最強の兵士と謳われる男の視線を感じてから、わずか数秒後の出来事だった。
「オイ、てめぇ・・・俺の部下を汚ぇ足で踏むな」
巨人の眉間にアンカーを刺し、鼻筋に足をかけている。
氷のような瞳で目の前の大きな眼球を睨みつけるその姿には、一切の慈悲を感じられなかった。
次の瞬間、頭上まで一気に駆け上がり、オルオの立体機動のアンカーが打ち込まれている部分を、皮膚や骨の一部ごと切り離す。
「ぐえ!」
地面に叩きつけられたオルオは、情けない声をあげた。
「オイ、誰かそのバカを安全な場所に連れていけ」
そして、サクラがオルオをペトラのところまで連れていくのを確認し、空中にふわりと身を投げ出す。
アンカーも刺していないのに・・・!
サクラが声をあげてしまいそうになるのと同時に、体を回転させてうなじの急所を見事に削ぎ落とした。
「すごい・・・」
思わず溜め息を漏らしたサクラに、ペトラが微笑んだ。
「当然だよ、兵長だもの」
「身のこなしが同じ人間とは思えない」
どうすれば、あのように空中で体勢を変えることができるのだろう。
いや、200メートル先から一瞬のうちにここまで間合いを詰めるとは・・・
「・・・それが、リヴァイ兵長なの」
ペトラは頬を赤く染め、尊敬の眼差しを向けた。
息絶える巨人の蒸気が、リヴァイの周辺を囲む。
その白さが、吹雪の光景を呼び起こした。