【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
最期の瞬間まで戦っていたのか。
ゆっくりと歩み寄り、その傍らに屈む。
右脚
左脚
胴
脇
胸
首
肩
腕
手首
指の一本一本に、視線を這わす。
巨人に囓られた跡は、少しもない。
しかし、口の周りと胸元におびただしい量の血がこびりついていた。
この血は全て、吐血によるものか。
「心臓がもたなかったのか・・・」
その顔に苦痛の色はまったくない。
むしろ調査兵団を護り抜いたことに満足しているのか、微笑んでいるようにさえ見える。
そして、死を優しく抱くように、可憐な青い花びらの勿忘草が取り囲むように咲いていた。
「サクラ・・・」
名を呼び、抱き起こす。
この隅々まで愛しい身体の、一片でも巨人にくれてやらずに済んで良かった。
「愛している」
目を・・・開けてくれ・・・
「愛している」
声を・・・聞かせてくれ・・・
冷たい唇に触れるだけの口付け。
「今・・・綺麗にしてやるからな」
吐血で汚れてしまった口周りや顎を舐めとる。
サクラの血がリヴァイの体内に入っていくと、まるで一つになれたような気がした。
「オイ・・・なんてツラしてやがる」
サクラは微笑んでいた。
その笑みは、今にも“兵長は本当に綺麗好きですね”と言いだすのかと錯覚しそうなほど柔らかい。
リヴァイの口がサクラの血で染まり、もう一度その顔を見つめた瞬間だった。