【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
ハンジがサクラと別れたという村。
そこに辿り着く頃には、太陽はその姿をほとんど消していた。
真っ赤に燃える地平線。
空高くに向かって徐々に色濃くする群青色。
「臭ぇな・・・」
巨人が死ぬ時に放つ独特な死臭が鼻をつく。
間違いない、ここで巨人との戦闘があった。
重苦しいほどの静けさの中、リヴァイは馬から降りた。
巨人の気配はない。
少し行くと、若い女兵士の死体が塀の下に横たわっているのが見えた。
あれは・・・秀でた点は無いが、芯がしっかりとした女だった。
右頬から肩にかけて抉るように食いつかれたのか。
あるべきはずの部分が欠損し、無残な姿に成り果てていた。
「よくやった・・・お前を誇りに思う」
リヴァイはゆっくりと歩み寄ると、彼女の赤毛をそっと撫でる。
そして、生きて戦った証である調査兵団の紋章を千切りとった。
さらに数メートル先には、人間の左脚らしきものが転がっている。
恐らく、索敵班班長の太ももから下の部分だろう。
残念ながら持って帰れるような紋章の類いは無い。
リヴァイは懐からハンカチを取り出し、肉片と化した脚にベットリと付いていた巨人の唾液を拭き取った。
「・・・お前の遺した意志は必ず俺が継ぐ」
自分が調査兵となった、その翌年に入団してきた兵士。
安らかに眠れ。
索敵班は3人一組となっているはずだが、残りの一人はどうしても見つからなかった。
おそらく、体ごと巨人に喰われてしまったのだろう。
一個班が全滅したことは明らかだった。
「サクラ・・・どこにいる」
ところどころ土が焦げているのは、巨人の屍の跡か。
その数は、明らかに5体を超えている。
リヴァイはそのままゆっくりと村の中を歩いた。
絶望的な光景のはずなのに、驚くほど心臓の鼓動が静かだ。
もしかしたら動きを止めているのかもしれない。
そう思ってしまうほど気持ちは冷え、何を目にしても良いように覚悟を決めた。
きっと、のどかな村だったのだろう。
雑草だらけの農道の両脇には、牧草地が広がっている。
道はだんだんと幅が広くなり、その先は広場となっているようだ。
その正面にある建物を見た瞬間、リヴァイの瞳が大きく広がった。