【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「・・・そりゃ、できねぇ相談だな」
「え・・・?」
「そういう事は自分の口で言ってこそ意味がある。何より、サクラはてめぇからの謝罪なんか欲しくねぇよ」
リヴァイはハンジから目を逸らし、愛馬の背中に跨る。
もし、ハンジに対して怒りがあったら、こうは思わなかったかもしれない。
酷い言葉で罵り、全身の骨がグチャグチャになるまで殴り、蹴り続けていたかもしれない。
しかし、今のリヴァイにはそのような気持ちはまったくなかった。
「あいつは、俺やエルヴィンのことよりも、お前を尊敬していた」
「え・・・」
“ ハンジ分隊長は・・・ ”
サクラが倒れた夜。
満天の星空を見上げながら交わした会話が、ハンジの脳裏に蘇る。
“ 人間と巨人の垣根を超えようとしている。巨人が存在する意味、そして共存する道を探している ”
“ 私は、そんな分隊長を尊敬しています ”
「そんなお前を恨んでるわけないだろ。だから謝るんじゃねぇ」
「あ・・・」
声を失う。
サクラの言葉の一つ一つ、笑顔の一つ一つが、静かな波のように押し寄せる。
「サクラは・・・私の歩む道を追いかけていきたいと言ってくれた・・・調査兵として・・・」
聡明で優しい瞳から、一筋の涙が溢れる。
それを見た三白眼も悲しく揺れた。
「ああ・・・だから俺は調査兵団組織を守ることを選んだ。じゃねぇと、お前はもう巨人を調べることができなくなる。それに・・・サクラも調査兵でなくなる」
「サクラの命よりも、サクラの意志を守ることを選んだんだね」
「バカ言え」
眼下に広がる、ウォール・マリア。
その遠くを見据える。
「まだサクラが死んだと決まってねぇだろ」
だから、行かなければならない。
生きていようが、そうでなかろうが、彼女の最期を看取るのは自分だ。
最期にその体を抱きしめるのも、その唇に口付けるのも、自分だ。
「どうか、無事で帰ってこいよ」
懇願するように言ったハンジを一瞥し、リヴァイは手綱を大きく引く。
そして、赤く燃える太陽へと走っていった。