【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
それから1時間後。
エルヴィン率いる調査兵団は、今は無人となっている村の補給拠点に到着した。
ここは半年前に築いたもので、当時サクラは荷馬車班を担当していた。
「来たるウォール・マリア奪還作戦のために構築した補給地点だが、まさか俺達が帰るために保管物資を使うことになるとはな」
そう呟いたリヴァイのケースの中には、ブレードが一本も残っていなかった。
長距離索敵陣形を展開せず、小さく固まって走る調査兵団は巨人との遭遇を免れなかった。
それでも鬼神のごとく斬り殺していくリヴァイをはじめ、残った精鋭らが隊列を守りきり、新たな犠牲者を一人も出すことはなかった。
太陽はもう西の空に沈もうとしている。
限られた食料と水、防寒具で一夜を明かさなければならない。
極度の恐怖と緊張、そして仲間の死により、心身ともに疲労困憊の兵士達。
その間を縫うようにして、リヴァイは自身の馬へと歩いた。
「リヴァイ」
馬がまだ走れることを確認し、跨がろうとした兵士長の後ろからハンジが声をかける。
右肩の脱臼はすでに徒手整復で治してもらったようだ。
まさか“私も行く”と言い出すのではないか、連れていくつもりはないと眉をひそめる。
「そんな顔しなくても大丈夫だ、私はここに残る」
リヴァイの気持ちを汲み取ったのか、ハンジは顔に笑みを浮かべた。
左手だけでの騎乗は困難だっただろう。
しかし、この力無く微笑む分隊長は、サクラが生きていることに一縷の望みを懸け、進行方向を示す煙弾を絶えず撃ち続けていた。
リヴァイの馬は、主人さながらにどの馬よりも屈強で速い。
その血を分けるシェリーもきっと、最後までサクラの頼れる足となるだろう。
艶やかで均整の取れた筋肉をしている馬を撫でながら、ハンジは悲しげな瞳をリヴァイに向けた。
「君は必ずサクラのもとへ辿り着くだろう。だから・・・彼女にどうか、伝えて欲しい」
「・・・・・・・・・・・・」
「ごめんなさい、と・・・」
どのような結果になったとしても、ハンジがサクラにかけることができる言葉はそれだけ。
後悔と自責の念で、どうにかなってしまいそうだった。