【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
ウォール・マリアの崩落から5年。
普段は静まり返っている草原に、馬の蹄が大地を蹴る音が響く。
長距離索敵陣形を展開してから、30キロほど近く。
ここへ来るまでに、右翼側で1回、左翼側で3回、巨人の確認を知らせる赤い煙弾が上がった。
しかし、まだ被害を受けたという報告はない。
順調・・・ということで良いのだろうか。
いや、ここは壁外。
安心していいことなど何もない。
中央を走るエルヴィンから10馬身ほど離れたところにリヴァイ。
その後ろを囲むようにリヴァイ班の4人。
ハンジ班は、司令塔から100メートルほど離れた左側に陣取っている。
同じ距離の右側にはミケ班が走っていた。
調査兵団で精鋭中の精鋭が顔を揃えている。
頼もしさを感じると同時に、後方で何かあったらどう対処するのかと不安になった。
そして、まさにそんな時だった。
「分隊長、奇行種が出現したようです!
いち早く左翼側後方から上がった信煙弾に気づいたモブリットが叫んだ。
目視では距離が測れないが、確かに黒い煙が上がっている。
「なに?! くぅ、今すぐ行きたい!! じゃない、エルヴィンに知らせよう!」
しかし、その必要はないようだった。
エルヴィンが側近に何かを指示している。
リヴァイもとくに反応していないから、このまま進むということなのだろうか。
奇行種と出くわした場合、戦闘は免れない。
その間、索敵班は機能しなくなり、そこから巨人の侵入を許してしまうことが多かった。
ハンジには悪いが、奇行種には遭遇しないのがベストだ。
ドォンという音がしたかと思うと、エルヴィンが2時の方角に向かって緑色の煙弾を放ったところだった。
「奇行種が確認された場所とは逆へ行こうってわけか」
ハンジが空へ伸びていく煙の筋を見て、呟く。
巨人の行動は予測がつかない。
群れを成しているのか、単独で動いているのかも分からない。
巨人の行動をコントロールする唯一の手段は、“人間が囮になる”ことだけだ。
だから、いかに巨人を避けて進むかが重要だった。