【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「兵長の笑った顔も、泣いている顔も、見たことがありませんから・・・」
もちろん、リヴァイだって喜怒哀楽の感情がはっきり分かれていることは、サクラも分かってる。
しかし、それが表情に現れることは滅多に無い。
リヴァイと出会ってから、一度として口の両端を上げるのを見たことがあっただろうか・・・
一度として、両目から涙が零れ落ちるのを見たことがあっただろうか・・・
「・・・それは・・・一番難しい要求だな」
嬉しくても、怒っても、悲しくても、幸せでも、それを態度や言葉で表現するのは苦手だ。
それらの感情は確かに抱いてはいるが、どうやって表に出して良いのか分からない。
「こればっかりは・・・自分でもどうしようもねぇ」
「兵長・・・」
「すまない・・・戸惑わせてしまうこともあるだろうな」
無表情に見えるだろうが、本当にお前といて幸せだ。
それだけは分かって欲しい。
「これからは努力をしよう・・・お前は、俺の笑顔と涙、どっちが見たい?」
するとサクラは少し俯いて考え込む。
「どちらも誰も見たことのない兵長の表情だから見てみたい。だけど・・・」
そして、顔を上げて微笑む。
「やはり笑顔がいいです。兵長には悲しい思いをして欲しくないから・・・涙は見たくありません」
その顔を見て、初めて自分が表情に乏しいことを悔やんだ。
こういう時、普通の男なら同じように微笑んでキスをするのだろうか。
しかし、笑いたくても頰が強張り、逆に眉間にシワが寄る。
「あ、兵長! 今、笑顔を作ろうと必死になっていますね?」
「ああ・・・俺は今すごく嬉しいし、お前のことが愛しくてたまらない。こういう時は笑顔を見せるものなんだろう」
「いいんですよ、兵長」
サクラの温かい両手がリヴァイの頰を包む。
「リヴァイ兵長は感情を表に出さない分、それを言葉にしてくださいます。貴方の気持ちは、ちゃんと届いていますから心配なさらないでください」
「サクラ・・・」
「意地悪なお願いを言ってごめんなさい」
そう謝るサクラが心から愛しくて。
どうにかして応えてやりたいと思うものの、こればかりはどうしようもない。
リヴァイは腹を括ると、上半身を起こしてあぐらをかいた。