• テキストサイズ

【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第5章 Eye of the Silver Wolf


獣の気配がして、全身が硬直する。


・・・近くに、何かがいる。


サクラは剣に手を置き、辺りを見渡した。
10メートル先で、こちらを伺う目が光っている。

「・・・あれは・・・」

体長は130センチほどだろうか・・・

美しい銀色の毛並みで、犬に似ているが違う。
何かの死骸を食べていたのだろう、口元が血で染まっている。

もしかして、あれが“狼”という生き物では・・・?

「・・・私達も食べるつもりなの・・・?」

一匹の狼は静かにサクラとロゼを見つめていたが、ゆっくりと瞬きをすると、二人の方へと歩み寄ってきた。
そして、倒れているロゼと寄り添うように腰を落とす。

「あなた・・・ロゼを温めてくれているの?」

野生の動物の、信じられない行動にサクラは言葉を失った。
不思議と恐怖は感じない。
それは、この狼にまったく敵意や警戒心を感じないからだ。

どれくらいそうしていただろう。
それまで朦朧としていたロゼが口を開いた。

「・・・寒い・・・」

良かった、感覚が正常に戻った。
それは体温が上がったということ。

すると狼は立ち上がり、遠吠えを始めた。

「なに・・・?」

風の音しかしない山に、狼の声が響く。

遠くにいる仲間に、何かを伝えているのだろうか。
何度も何度も、声を絞るようにして鳴いている。

しばらくして、どこからか別の狼の遠吠えが聞こえてきた。

「クゥン・・・」

狼はサクラの外套の裾を噛むと、左側の道へと引っ張った。

「もしかして・・・道案内してくれるの?」

狼はじっとサクラを見つめると、雪が積もった道を器用に進んでいく。
サクラはなんとかロゼの体を抱きかかえ、その後を追いかけた。


雪山で出会った、野生の銀狼に一縷の望みを託して・・・
/ 781ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp