【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第5章 Eye of the Silver Wolf
一歩踏み出すたび、太ももまで雪に埋まる。
自分の方がロゼよりも肉体的には強い。
サクラは前を歩いてロゼのために道を切り開いた。
それにしても・・・なんて雪とは重いものだろう。
ほんの30センチ進むために、気が遠くなるほど時間がかかる。
全身の体力が奪われていくようだ。
「道がある、どっちに行けばいい?」
前方に、二股に分かれている道らしきものを見つけた。
「ロゼ!どっちに行けばいいかな?」
選択を間違えれば、さらに奥深くへと迷い込んでしまうかもしれない。
絶対に判断を誤れない。
「ロゼ・・・?」
返事が、ない。
「ロゼ!!」
慌てて振り返ると、ロゼは数メートル後ろでうつ伏せに倒れていた。
「ロゼ、大丈夫?」
無我夢中で戻り、その体を抱き起こす。
「・・・ぃ・・・」
「え?」
真っ青な顔。
自分の手も感覚がないほど冷えているから確かめることはできないが、おそらく体温が下がりきっているのだろう。
「・・・つ・・・い・・・」
「しっかりして!なに?なにを言っているの?」
「あ・・・つ・・・い・・・・・・」
「熱い・・・?」
その時、サクラの脳裏に教官の言葉がよぎる。
体温が異常に低下すると、外気との温度差で暑いと感じることがある。
このままでは死んでしまう・・・
「誰か・・・誰かいませんか?!」
叫んだところで、助けが来るわけじゃない。
普通の山路ならば担いで降りることもできたかもしれない。
でも雪に阻まれ、まともに歩くことすらできないんだ。
辿り着くまでに、きっと・・・
「熱い・・・外套を脱がせて・・・」
「だめだよ!我慢して!」
自分の外套を脱いで着せよう。
そうすれば少しは、体温が戻るかもしれない。
そう思って、自分の胸元に手を当てた時だった。