【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第5章 Eye of the Silver Wolf
卒業間近の訓練兵にとって、最大の難関。
それは、雪山での訓練。
マイナス10度という極寒の中、装具を着けて山に登る。
強靭な体力と精神力、そして危機管理能力が必要とされるこの訓練で、サクラとロゼは集団からはぐれて遭難した。
「ロゼ、どっちに行けばいい?」
「わからない・・・現在地が取れない!」
吹雪のせいで視界が悪く、磁石で方角を知ることができても現在地が不明でどちらに進めばいいのかわからない。
もうどれくらい歩いただろう、体温がどんどん下がっていくのが分かった。
手足の末端から感覚が無くなっていく。
「うう・・・」
「がんばって、サクラ!」
ロゼはこんな時でも冷静さを失わなかった。
親友に迷惑をかけるわけにはいかない。
そもそも、自分がもっと早く雪道を移動できていれば、こんなことにはならなかった。
もう太陽は完全に沈んでしまっている。
これからさらに気温が下がるから、 このままでは二人とも危ない。
「ごめん」
サクラが謝ると、ロゼは怒り混じりに叫んだ。
「何謝ってんの?この状況は自分のせいだとでも?ふざけないで!」
「だって私が遅かったから・・・」
「あんたのせいじゃないよ、サクラ!ここからどうやって兵舎に戻るかが訓練なんだから」
自分だって低体温症でつらいはずなのに、励ましてくれる。
ロゼはそういう子だった。
「だから、一緒に考えよう?どうやったらこの訓練をクリアできるか」
サクラは乾ききった唇を噛み締め、頷いた。