【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
しばらく気まずい空気が流れていると、不意にそれを打ち消すようにエレンが立ち上がった。
「すっかり遅くなっちまったな・・・戻ろう」
そう言って、サクラの方へ手を伸ばす。
一瞬、払いのけられるかもしれないと不安になったが、握り返してくれてホッとした。
良かった、怒ってはいないようだ。
「サクラ・・・オレはお前から見たら、まだまだガキなんだろうな」
帰り道、満天の星空を見上げながら呟く。
するとサクラはエレンの頭をポンポンと叩いて微笑んだ。
「焦ることはないよ、エレン」
リヴァイと比べたら、エレンはまだまだ子供だ。
でも、人はどちらともつかない中途半端な時期を越え、大人への階段を上がっていく。
大人でも、子供でもない今は、人生の中で最も貴重な時間。
「頑張ってね、エレン。きっと素敵な男性になるよ」
「自信ねぇな」
「大丈夫。いつかちゃんと恋愛とは何かを分かる日が来る」
そうしたら、エレンは本当に守るべき人は誰かを理解する。
無意識のうちにではなく、心から愛しいと思って口付けをするようになるだろう。
「ちゃんと見守ってるからね」
どうか・・・それまでシガンシナが崩落した5年前のような悲劇は起きませんように。
もし、再び巨人が攻めてくるようなことがあれば・・・
今度こそ、エレンは身も心も“化け物”と化するかもしれない。
来た時と同じように、少し先を歩くエレンの背中。
それはリヴァイとは違い、細くてまだ少年らしさを残している。
「エレン・・・あまり多くを背負いすぎないでね」
そうでなくても、貴方は突っ走ってしまう性格なのだから。
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもない」
月明かりに照らされたエレンは、驚くほど儚い。
彼に待ち受けている運命が、どうか悲しいものではありませんように・・・
サクラは、それを願ってやまなかった。