【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
1時間後。
訓練兵達が並ぶ食卓の上に、サクラとミカサが剥いた芋が並んでいた。
さらに硬いパンに、野菜だけのスープ。
裕福層の人間が見たら眉をひそめるようなメニューが、彼らの毎日の食事だった。
ここでは決められた時間内に食べ終わらなければならないのが規則。
しかし、エレンは食堂の前で迷っていた。
今日はまだ一度もサクラと顔を合わせていない。
「どうすりゃいいんだよ」
ドアの前で足が止まったまま、かれこれ15分は経っている。
しかし、サクラを想像しながら自慰をしてしまった罪悪感で、顔を合わせるのが怖かった。
「・・・・・・・・・・・」
謝ればいいのだろうか・・・?
いや、そうしたら全てを話さなければいけない。
なに食わぬ顔でサクラの隣に座れるほど、エレンは器用ではなかった。
「・・・やっぱやめとこう」
夕食は抜いて部屋に戻ろう。
そもそも食欲がないし、早く寝てしまった方がいい。
そう思って踵を返した瞬間。
「何してるの、エレン」
いつの間にか背後にミカサがいたことにまったく気がつかず、もう少しでぶつかってしまうところだった。
「ミ、ミカサ」
「まだ食べてないのに、どこへ行こうとしてるの」
「お前には関係ねぇだろ」
横を通り過ぎようとすると、すごい力で二の腕を掴まれる。
「痛いな、何すんだよ」
「ご飯は食べなくちゃだめ」
「一食ぐらい食わなくても死にゃしねぇって」
「でも、今日はサクラもいる」
「・・・・・・・・・」
だから食べたくないのに、この幼馴染はまったく分かっていない。
「サクラ、明日の朝早くに帰ってしまう」
「・・・知ってるよ」
「明後日は、壁外調査だって」
「・・・・・・・・・・・・」
もしかしたら、これが一緒にとる最後の食事になるかもしれない。
ミカサはその言葉を口にはしなかった。
しなくても、エレンは十分わかっていると思った。
でもそれ以上に・・・
口にすることで、それが本当になるのを恐れた。