【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「エレンはきっと迷惑なだけ」
10年に一人の逸材と呼ばれるほど実力があり、判断力にも長けているミカサだが、エレンのことになると我を失うきらいがある。
時折エレンはそれを疎ましく思うこともあるようだし、何よりミカサ自身がそれを自覚している。
「それに・・・エレンが女子から人気あるのは知ってる」
「ミカサ・・・」
「けど、今は調査兵団に入って、巨人を駆逐することしか頭にないのも知ってる」
だから、今はエレンが女子に呼び出されて裏庭に向かう姿を見かけても、動揺はするが感情を抑えていられる。
「確かに・・・そんな感じだった」
昨日の夜、まさにそんな事を言っていた。
恋愛なんて兵士には余計な感情だと。
「エレンはまだ子供なんだよ。それに鈍感だから、人の好意に気づかないのかもしれない」
「・・・・・・・・・・・」
ミカサは黙ったままカゴに残った最後の芋を手に取ると、ナイフをグッと押し付けた。
「・・・エレンが誰を好きになってもいい」
力が入っているのか、これまでよりも分厚く剥かれ、床に落ちていく皮。
「私はただ・・・そばにいるだけでいい」
言葉とは裏腹に、左手の中の芋はとても小さくなっている。
まだ15歳。
自分の感情を押し殺して、好きな人が誰かと恋に堕ちるのを冷静に受け止められるわけがない。
サクラはそんなミカサがとても愛おしく思え、その体をギュッと抱きしめた。
「ミカサはやっぱり良いお嫁さんになるよ。エレンも必ず、その事に気がつく日が来る」
「サクラ・・・」
エレンが貴方以外の人を選ぶわけがない。
そう耳元で囁くと、ミカサは安心したように微笑んだ。
それはエレンやアルミン、同期の仲間には見せないような、幼い表情。
東洋人最後の純血だった母親と、アッカーマンの血を引く父親だけに見せていたものだった。