【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
コチコチという時計の秒針と、誰かのいびきがやけに耳に触る。
ボンヤリとした脳裏に浮かぶのは、巨人によってシガンシナ区が崩落したあの日の光景。
ウォール・ローゼへと逃げる船の中で出会った時のこと。
“ 君達・・・大丈夫? ”
エレンと、ミカサと、アルミン。
身を寄せ合い、呆然としていた自分たちにサクラが声をかけてくれた。
“大丈夫か”と聞いてきたくせに、サクラの方が今にも倒れそうなほど真っ青な顔をしていた。
“ ほんの少しだけど、お菓子食べる? 少しは気分が落ち着くよ ”
そう言って、ポケットから出したのはアーモンドの焼き菓子。
三人の手に一つずつ渡してくれた。
その時に軽く触れた手がとても暖かくて、目の前で巨人に喰われた母親に少しだけ似ているなと思った。
それから・・・
サクラと一緒にいれたのは、数週間もなかったように思う。
自分たちは生産者として開拓地に送られ、兵士を志願できる年齢に達していたサクラは訓練兵となった。
“ エレン、大きくなったね ”
“ ケンカしちゃだめだよ ”
まるで姉のように自分を見守ってくれるサクラ。
ミカサやアルミンと同じくらい、大事な人だ。
“ おやすみ、エレン ”
久しぶりに会えて嬉しいのに・・・
なんだか、いつもと違う。
半覚醒状態のまま、どれだけ時間がたっただろう。
エレンは、下半身に違和感を覚えて体を起こした。
「クソ・・・やっぱ勃ってやがる」
朝、抜いたのにな・・・と舌打ちする。
年齢のせいか、ここ最近は頻繁に勃起してしまう。
仕方がない・・・
半年前に知らないことをジャンにバカにされ、対抗心から始めた自慰。
性交渉に興味がないといえば嘘になるが、エレンにとってはただ生理現象を鎮めるためだけの行為だ。
ここで扱きたいところだが、すぐ目の前でアルミンが寝ている。
途中で起きられたら気まずいし、万が一、シーツに飛び散りでもしたらジャンやライナーが匂いで気付いて冷やかすだろう。
面倒臭いが、ここは他所でやるしかない・・・
夢精でなかっただけ、マシだと思おう。
エレンは音を立てないようにベッドから降り、便所に向かった。