【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
頭が混乱して動けないでいるうちに月にかかっていた雲が晴れ、辺りが少しだけ明るくなる。
そのせいで、どうやら向こうからもこちらが見えるようになってしまったようだ。
人の気配を察したエレンが、何でも見通せそうな大きな目をこちらに向けてくる。
「サクラ・・・?」
一瞬、怪訝そうに眉をひそめた。
まさかここに居るなんて信じられなかったのだろう。
しかしすぐに確信したのか、嬉しそうに顔を輝かせる。
「サクラ! サクラじゃねぇか!!」
目の前にいた女の子をどけて、こっちに駆けてくる姿は昔のまま。
しかし、袖口で唇を拭いているのは、やはりキスをしていた証拠だろう。
そばまで来ると、さらに身長が伸びているように思えた。
筋肉も増えたようだが相変わらず細身で、首元には父親から貰ったという鍵をぶら下げた紐が見えている。
「こ、こんばんわ、エレン」
「驚いたな。どうしたんだよ、仕事で来たのか?」
「いや・・・その、休暇で・・・」
女兵士はサクラの姿に気づくなり、恥ずかしそうに兵舎へ走っていってしまった。
エレンの方は、まったくそのことを意に介していないようだ。
「今日はここに泊まるのかよ?」
「うん、二泊ほどお世話になることになっているの」
「そうか! ミカサとアルミンもきっと喜ぶぞ! 来いよ」
エレンはごく自然にサクラの手を握った。
昔はいつもそうしていたはずなのに、手を握られた瞬間にドキッとする。
それは、サクラが知っているエレンの手よりもずっと大きく・・・
すっかりと男性の手になっていたからだった。