【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
調査兵として自分がなすべき事。
それは、この巨人に支配された残酷な世界を愛する事だ。
今まではただ命を捧げればいいと思っていたが、違う。
希望を生み出すだめに、犠牲となる。
何も生み出さない死は、犬死と変わりない。
「私はこの世界が好きです。調査兵になって、心からそう思えるようになりました」
だから、今は確信が持てる。
この世界を愛しているからこそ、自分に死が訪れることがあっても、犬死にはきっとならない。
「・・・・・・・・・・・・」
キースは黙ってサクラの言葉に耳を傾けていた。
かつて、調査兵団のトップにまで上り詰めながら、その双翼を畳んでしまった。
そんな自分が今もエルヴィンの立場にあったなら、サクラのような兵士は扱い辛かっただろうと思う。
二の足を踏むことが許されない壁外で、彼女を犠牲にする事を躊躇うかもしれない。
自分は絶望すら感じたこの世界を、“好きだ”と言って微笑む彼女を失いたくない。
いや、失うわけにはいかないとさえ思える。
「・・・お前は不思議な奴だ」
キースはそう言って、口元に笑みを浮かべた。
“人類に心臓を捧げる”と口だけで言う兵士は多い。
特に内地勤務の者に。
しかし、目の前のこの女兵士は、本当にその命を人類の未来を守るために捧げようとしている。
「だが、立派な兵士だ」
自身が育てた兵士の成長を見ることができ、嬉しかった。
恐らく彼は、壁の外での自分の無力さを痛感したからこそ、サクラのような兵士を育てることを自らに課したのかもしれない。
決して、巨人から逃げたわけではなく、巨人に対抗し得る兵士を作ること。
それが、キース・シャーディスの使命なのだろう。
普段は鬼のような形相の教官が、まるで娘を見守る父親のような表情を顔に浮かべた。
「いいか、だからと言って死に急ぐなよ。貴様も今では立派な戦力だということを忘れるな」
「はい」
サクラはもう一度敬礼し、恩師に向かって微笑んだ。