【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第4章 Geranium
実験後、地下にあるハンジの作業場から出てきたサクラをリヴァイが呼び止めた。
「サクラ」
まさか、自分の名を知っているとは思わなかったのだろう、少し目を丸くしながら敬礼をする。
「お前は巨人に恨みを持ってねぇのか?」
「え?」
サクラにとっては唐突な質問らしく、答えに困っている様子だった。
「さっきの実験で、お前の同期は被検体に仲間を殺された怒りをぶちまけていただろう。お前だってフリーダを殺された。恨みを感じたり、憎しみを覚えてもおかしくない」
さすがにフリーダの名前を出すと、瞳が揺れる。
リヴァイは、ハンジに“傷口を抉るようなマネをして趣味が悪い”と言った自分に矛盾を感じた。
「恨みや憎しみ・・・を感じるのでしょうか?」
兵士長を苛立たせないよう、言葉を選んでいるのか。
ゆっくりと口を開いた。
「たとえば、地面を這う蟻は・・・人間に踏み潰されて、恨みを感じるのでしょうか?私達の食料となる家畜は、殺される時に恨みを感じるのでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「蟻は反撃として人間を噛みます。家畜は生まれた時から殺されるために飼育されるため、反撃という言葉を知りません」
蟻も、家畜も、人間の前では無力に同じ。
それは、人間と巨人の関係と同じではないか。
「私は、恨みや憎しみが反撃の糧になるとは思いません。反撃は・・・自由を知る生物の本能だと思っています」
生きるために、自由を取り戻すために、大きな力に抗う。
「私達は家畜と違い、巨人に飼われているわけではないので反撃をします。そして、蟻とは違い、巨人に対抗し得る知識と技術を持っています」
まだ10代とは思えないほど、凛とした強さを見せる。
「壁の向こうには、無限の世界が広がっている。自由がある。私はそれを取り戻したい」
ああ、
そうか・・・
「そのために、私はハンジ分隊長についていきます。エルヴィン団長を最後まで信じます。そして・・・」
リヴァイは鳥肌がたった。
「私は、リヴァイ兵長の力となります」
心臓を、人類に捧げます。
分かったぞ、ハンジ。
コイツは・・・本当に危うい。
この危うさが・・・もしかしたら、世界を変えてくれるかもしれない。
あの、色のない世界を・・・・・・