【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第4章 Geranium
「驚くことに、あの子は母親を殺した巨人を恨んでいないんだ。しかも、弟を殺した駐屯兵も恨んでいない。リヴァイ、お前にそれが理解できるか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「巨人も・・・人間も恨んでいない。なら、あの子の悲しみや怒りはどこに行ったんだろうね」
一呼吸置いて、続ける。
「あの子が危ういというのは、そういうことだよ」
巨人を恨んでいないから、冷静に対峙することができる。
でも、だからこそ殺す時に躊躇が生まれるかもしれない。
人間を恨んでいないから、守るために調査兵となって命をかけられる。
でも、だからこそ自分の命だけでなく、他人の命にも無頓着になるかもしれない。
「そしてもし、何かを“恨む”日がきたら・・・あの子の精神は崩壊するかもしれない」
そうなったらリヴァイの出番かもね、と冗談っぽく言った。
リヴァイの目に、壁外調査から帰った夜の光景が浮かぶ。
友人の死を悼み、大粒の涙を流していた姿・・・
あの時、確かに悲しみを感じていた。
しかし、悲しみに伴う、怒りの感情はいったいどこに?
サクラの横顔を見つめるリヴァイ。
ハンジは何か確信を得たように、頷いた。