【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
水を含んで濡れた、 花壇の土。
葉からは透明な雫が垂れている。
団長はそれらに目を向けながら、ポツリと呟いた。
「体調は、大丈夫か?」
ハンジからは、サクラの異変について知り得る限りのことを聞いている。
おそらく今、彼女の体に関してはリヴァイよりも理解しているだろう。
「・・・今は、問題ありません」
「“今は”、か」
何か思うところがあるのだろうか。
一呼吸置いて、サクラを見つめる。
「次の・・・第55回壁外調査には参加できそうか?」
「もちろんです!」
「そうか・・・」
エルヴィンは曖昧に微笑むと、まだ太陽が上がりきらない空を見上げた。
「私は、君に謝るべきなのかもしれない」
「あ・・・謝る?」
それは予想だにしなかった言葉だった。
調査兵団の実行部隊トップが、一兵士でしかない自分に謝罪?
その理由がまったく思い当たらずに戸惑っていると、エルヴィンは静かな声で続けた。
「正直に言おう。私は君をずっと利用してきた・・・そしてこれからもそうするつもりでいる」
「利用? あの・・・私は別に構いません」
自分は調査兵。
その団長に利用されるのは、当たり前のことだ。
しかし、エルヴィンは首を横に振ると、サクラの頭にそっと手を置く。
「リヴァイは・・・」
突然、リヴァイの名前を出され、サクラがピクリと反応した。
「リヴァイは・・・巨人と対等か、それ以上の力を持っている。それは、現時点で人類唯一と言ってもいい」
「はい・・・」
「あいつは、我々人類に残された希望であり、巨人に対抗するための駒だ」
その時、サクラはエルヴィンの意外な一面を見たような気がした。
エルヴィンとリヴァイは立場こそ上官と部下にあたるが、友人関係にあるものとばかり思っていた。
なのに、今はまるで兵士長を人間としてではなく、“駒”としてしか見ていないといった口ぶりだ。
「だが、リヴァイには感情がある」
サクラの頭上に置かれたエルヴィンの大きな手が、僅かに震える。
「リヴァイは必要あらば、私のために自ら死を選ぶだろう」
その言葉に、心臓がドクンと大きく音をたてた。