【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第4章 Geranium
「あの新兵はね、この前の壁外調査で同郷の友人を亡くしたんだ」
「お前も趣味が悪いな。傷口を抉るようなマネしやがって・・・」
「この世の中に巨人を恨んでいない人間なんていないよ」
その異様な声のトーンに、リヴァイはハンジを見上げる。
「リヴァイも気がついたでしょ?あれが“普通の”反応なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「半年前、たまたま訓練所に立ち寄って、サクラを見かけた時は衝撃だった」
ハンジは、罵声を浴びせられている巨人を静かに見ているサクラに複雑な瞳を向けた。
「その日は、志望兵団への適性を調べる日でね。調査兵団希望の訓練兵には興味があったから、こっそり参観させてもらったんだ」
「・・・ヒマだな、お前」
「まぁ、面談みたいなものだよ。キースの質問に答えるだけのね」
『なぜ、ブルームは調査兵団を志望する?』
『駐屯兵になっても、何も変えることができないと思ったからです。憲兵には興味がありません』
『何を変えたいというのだ?』
「なんて答えたと思う、リヴァイ」
「さぁな」
ハンジは口元に笑みを浮かべた。
『人、です』
「・・・人?」
意外な言葉に、リヴァイは首を傾げた。
「そう。あの子はね、シガンシナ区出身なんだ。3年前、巨人に母親を殺され、当時の駐屯兵は自分が助かるために彼女の弟を巨人に投げつけたそうだ。そして、混乱の中で父親も失った」
「・・・・・・・・・・・・・」
「なのに、サクラは・・・」
『人を変える、ということはどういうことだ?』
『壁外で生きる術を見つける。その力をつける。今の人類は、獣以下ですから』
鳥のように空高く飛んで脅威から身を守る術も、
ドブネズミのように雑菌にまみれた食物を食べて生き抜く術もない。
そのくせ、生きることに執着し、自分が助かるためには他の犠牲を厭わない。
『鳥のように身を守る術を、ドブネズミのようにしぶとく生きる術を、自分は探したいのです』
『巨人が憎くはないのか?』
『・・・なぜ、巨人を憎まなければならないのですか?』
リヴァイの瞳が大きく広がる。
その反応を見て、ハンジは頷いた。