【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「私がまだ訓練兵だった頃・・・私は、死ぬはずだった運命を助けてもらいました」
「助けてもらった?」
自分の顔を覗き込む、リヴァイの瞳。
ああ、まったく一緒だ。
「はい・・・一匹の狼にです」
銀白の、人類を寄せ付けない極寒の世界。
そこで出会った、一匹の美しい狼。
「雪山での訓練のことです。私はロゼと同じ班だったのですが途中でみんなとはぐれ、遭難してしまいました」
「お前ら、兵士になるためにそんなことをしていたのか」
「はい。マイナス10度の寒さの中、現在地すら取れず途方に暮れていました。一緒にいたロゼは低体温症になりかかっていて、かなり危険な状態になって・・・」
あの時、自分は死んでも構わなかった。
ロゼさえ生き延びてくれたら。
「死を覚悟した時、一匹の狼に出会ったんです。銀色の毛並みが綺麗な、野生の狼でした」
「・・・・・・・・・・・・」
サクラを抱きしめる腕に力が入る。
言葉にはしなかったが、何故その場に自分がいなかったのだろうと悔しさが込み上げていた。
「狼を目にするのは初めてで、どのような動物か知っていましたが・・・不思議と怖くなかった」
「あいつらは腹が減ってりゃ人間も喰う。巨人ほどでないにしてもな」
「ええ・・・でもその狼はロゼを温め、私にどの道を進めば良いか教えてくれました」
「ほう・・・そいつは珍しいな」
あの状態から、無事に兵舎に戻ることができたのは奇跡だった。
ロゼは低体温症になりかけていたものの、自分は軽度の凍傷すらなかった。
普通は死ぬはずだという。
サクラはリヴァイを見上げ、微笑んだ。
「この話をしても、誰も信じてくれませんでした。ロゼも気を失っていたから、狼を見ていませんし・・・」
静かで、鋭い三白眼。
この瞳はあの狼によく似ている。
気高さや、漂わせる孤独も。