【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「泣いて・・・いるの?」
ペトラの顔から笑みが消え、心配そうな表情に変わる。
オルオもどうして良いか分からないといった様子でサクラを見つめた。
「ごめん・・・なんか、あったかくて・・・」
リミッターを外せるようになった代償として、いずれ訪れるだろう死。
ハンジに聞くまでもなく、心臓に痛みを感じたその瞬間から気づいていたことだ。
兵士だからといって、恐怖がないわけじゃない。
ただ、死そのものが怖いのではなく、リヴァイとの別れが恐ろしかった。
でも、このブランデー入りの紅茶が、過敏になった神経を和らげ、恐怖を少しずつ溶かしてくれる。
「この紅茶・・・飲むと気持ちがラクになる・・・だから・・・泣けてきちゃうね」
すると、ペトラは涙を流すサクラをギュッと抱きしめた。
「遠慮しないで泣いた方がいいよ。じゃないと、押し潰されちゃう」
涙の理由は聞かない。
泣くことで今、サクラの気持ちがラクになっている、それだけ分かれば充分。
「・・・ありがとう、ペトラ」
零れた涙は、ほんの数滴だった。
しかし、驚くほど気持ちが軽くなっている。
サクラに笑顔が戻ったのを見て、オルオもホッとしたような表情を見せた。
「ごめん、もう大丈夫。すっきりした」
「そう・・・良かった」
もしかしたら、アルコールは蒸発しているけれど、この香りが酔いを錯覚させるのかもしれない。
だから、緊張をほぐすことができたのだろう。
「この紅茶は美味しいだけじゃない。頑張りすぎている人とか・・・素直に泣けない人とかに作ってあげるといいかも」
サクラがそう言うと、ペトラはニッコリと微笑んだ。
「そうだね・・・そういう人がいたら、作ってあげることにする」
願わくば、そのような機会は訪れないほうがいい。
それはすなわち、誰かが苦しんでいるということだから・・・
「サクラもまた練習を手伝ってね」
倒れたせいか、少し疲れた様子のサクラ。
その顔を見ていると、怖いような、悲しいような気持ちになる。
何故?
理由は分からない。
「うん」
また、ペトラと一緒にティー・ロワイヤルを作る。
そのことを信じて疑わず、サクラも微笑みながら頷いた。