【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「サクラが飲んで。貴方のおかげで成功したようなものだから」
「でも、私はただスプーンを抑えていただけだよ?」
成功するまで何度も練習しただろう。
自分ではなく、ペトラかオルオが飲むべきだ。
そう思って戸惑いを見せるサクラを見て、ペトラは首を横に振った。
肩までの長さの綺麗な髪が、さらさらとなびく。
「サクラに飲んでもらいたいの。オルオじゃなくて、サクラが抑えてくれていたから成功したんだと思う」
「ペトラ・・・」
後ろでオルオが“なんだよ、その言い方!”と不満げな声を上げたが、それを無視して続ける。
「今日・・・倒れたって聞いたよ。疲れているんじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
本当はさっき、心臓を抑えながら倒れたと聞いて、サクラの体のことについてずっと気になっていたことをハンジに打ち明けた。
あれはいつの壁外調査だったか・・・
サクラが自身の体のリミッターを外した瞬間を目の当たりにしたことがあった。
本人は気づいていないかもしれないが、目は血走り、こめかみには脂汗が浮いていた。
そして“有望の若手兵士”と評価されるペトラよりも高い戦闘能力を発揮した。
でも・・・あの様子では、いつか体が壊れてしまうだろう。
「本当にいいの? ペトラ」
「いいに決まってるじゃない!ほら、よく言うでしょ、“少量の酒に勝る薬は無し”ってね」
こんな紅茶に、癒す効果などないだろう。
自分にはこんなことしかできないけれど、サクラの体が温まれば良いと思う。
「ふふ・・・まるでピクシス司令みたい」
サクラは笑いながら“ありがとう”と言って、ブランデーの香りをただよさせるティーカップを手に取った。
口の中にそっと紅茶を流し込むと、優しい甘さが広がる。
「おいしい・・・」
心からそう思う。
喉から全身に温かさが広がっていくようだ。
この瞬間まで、自分がどれだけ気を張り詰めていたか、初めて気がついたような気がする。
その時だった。
「サクラ・・・?」
ペトラの瞳が、驚きで丸くなる。
気がつくと、一粒の涙がサクラの頬を伝っていた。