【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「ティー・ロワイヤル?」
「そう。紅茶に、火をつけてアルコールを飛ばしたブランデーを入れるの。シーナで今、流行っているんだって」
「へえ」
その練習をしているというわけか。
しかしテーブルの上は真っ黒に焦げた角砂糖の残骸や、零れたウィスキーで散々なことになっている。
もしここにリヴァイが現れたら、鬼のような形相で掃除を始めるだろう。
「難しいの?」
「うん。ブランデーを染み込ませすぎると紅茶の味わいが損なわれちゃうし、何より・・・」
「さっきみてぇに火柱がたつしな」
「オルオ!」
確かに、危なそうだ。
一歩間違えれば火事になる危険もあるから、さっきサクラが声をかけた時に二人ともギクッとしていたのか。
「もう一回だけ練習して、ダメならあきらめよう」
「そう言って何度目だよ。ブランデーがもったいねぇな」
「いいの! サクラ、スプーンを抑えていて」
「う、うん」
真剣な表情のペトラに圧倒されて、リヴァイのために紅茶を淹れにきたことを忘れ、言われた通りにティースプーンを抑えた。
「いくよ」
合図とともに、小瓶からブランデーが角砂糖に注がれる。
その手は緊張からか、震えていた。
「もういいかな」
砂糖が琥珀色に染まった所で、火をつけたマッチを近づける。
ポッと音をたてて、青い小さな火が灯った。
大きすぎず、砂糖を焦がすほどの強さでもない炎。
ペトラとオルオ、サクラは、互いに顔を見合わせた。
数秒後。
砂糖が溶け、ブランデーと混じった甘い香りが部屋に立ち込め始めた。
もう少しで火が消えるという所で、ペトラはスプーンを紅茶に落とす。
すると、芳ばしい香りが鼻をくすぐり、三人の顔から自然と笑みが零れた。
「成功・・・だよな、ペトラ!」
「うん!」
これが何度目の練習かは知らないが、二人の喜びようから察するにかなりの回数だったようだ。
さっきは喧嘩腰だったオルオも、今は嬉しそうにペトラの肩を叩いている。
「どれ、俺が味見してやる」
「だめ、オルオ!!」
遠慮もなくティーカップに口を付けようとしたオルオの手を、ペトラが強くはたいた。
そして、サクラに明るい笑顔を向ける。