【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「しかし、ごく稀に・・・リミッターを解除したままでいられる人間がいる。身近にもそういうヤツがいるだろう」
サクラの瞳が揺れる。
揺れる黒髪に、冷たい色の三白眼。
一個旅団並みの強さと謳われる兵士長の姿が目に浮かんだ。
「リヴァイは特別なんだよ。この壁の中にはそういう力を持った“血統”があるらしい。リヴァイがその一人かは分からないけれど」
あの人並み外れた戦闘力は、それで説明がつく。
常人が生きるために抑えている力を垂れ流しにしているから、あの驚異的な戦い方をすることができるんだ。
「サクラも恐らく、何らかのキッカケがあってリミッターを外す術を覚えたんだろう」
「キッカケ・・・」
「極限状態に陥ったり、命を脅かされたり・・・そういう事が過去にあったと思うんだけど」
サクラはそっと目を閉じた。
極限状態に陥ったことも、命を脅かされたこともある。
調査兵をやっていれば、よくあることだ。
少し考え込み、そしてある光景が蘇った。
ああ、そうか・・・
そういうことだったのか・・・
「・・・あの時・・・」
ずっと疑問に思っていたことがある。
“あれ”はいったいなんだったのだろうか、と。
それが今、ハッキリと分かったような気がした。
「ハンジ分隊長」
それはとても静かな声だった。
「私が自然と身につけたこの力は・・・いつか私を殺すのですね」
すると、思慮深い分隊長は、悲痛の表情で頷く。
「ああ・・・殺すだろう」
筋力を上げるため、サクラの心臓は異常な速さで全身に血液を送っている。
その結果、心臓そのものが肥大してしまったのだろう。
「リミッターを外すのは誰にでも“できる”ことだ。しかし、誰にでも“許された”ことではない」
リヴァイのように、先天的にリミッターが外れても耐え得る身体だったらいい。
しかし、サクラは違う。
リヴァイと同じ力を持つことは、すなわち身体の破壊を意味する。
「リヴァイはこの事に気づいていないんだろう?」
「・・・はい・・・」
普段の生活ならともかく、壁外に行っても所属班が違うからリヴァイの前で戦うことはなかった。
だから、自分にこんな力があることを、彼は知らない。