【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「・・・初めて心臓に痛みを感じたのはいつだった?」
ハンジが質問すると、サクラは俯いて手元の花の茎を撫でた。
「・・・最初は鍛錬の後、なんとなく違和感を覚える程度でした。でも、そのうちに日常生活でも感じるようになって・・・」
「日常生活?」
「例えば、リヴァイ兵長のことを考えている時とか」
肩をすくめ、悪戯っぽく笑う。
しかしそれが事の深刻さを隠しているだけということに、気がつかないハンジではなかった。
「医師に聞いたんだけど、サクラは筋肉量を自由に上げることができるらしいね。いつからできるようになったの?」
「・・・多分、訓練兵団を卒業する、少し前だと思います」
「誰かに教わった?」
「いいえ・・・気がついたらできるようになっていました」
「・・・・・・・・・・・・」
花壇を楽しむために配置されているようなベンチ。
そこに腰掛けるハンジは、背中を丸めて両肘を太ももの上に置いた。
「サクラのその力は、本来は人間が持つべきものではない」
「・・・え?」
「人間の筋肉というのは、脳によって発揮する力が制限されているんだ。人体そのものを守るために」
通常、人間は最大筋力値の2割程度しか発揮できないという。
力を使えば、それに応じた量の筋細胞が破壊される。
「でも、人は“極限状態”に陥った時、無意識に“リミッター”を解除することができる。生命の危険や緊急事態の時とかね」
脳が異常に興奮するため、リミッターが外れてケタ外れの力を出すことがある。
「これは一時的なもので、出した力の大きさに比例してその後の反動も大きくなるんだ」
だから、よほどのことがない限り、普通の人間はリミッターを解除したりはしない。
その状態が続けば、筋細胞の回復が間に合わなくなって骨折などの重傷につながるからだ。