【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
ハンジに支えられながら向かったのは、中庭だった。
そこには、自分がこれまで育ててきた花壇がある。
この世界でどこよりも心が安まる場所だ。
すでに太陽は、すっかりとその姿を消していた。
空には群青色が広がり、地上との境界線が僅かに赤く染まっている。
そして、銀色の小さな星が砂を巻いたように瞬いていた。
サクラは花壇の淵に腰を下ろすと、一つの花に顔を寄せる。
太陽は姿を隠しているというのに、瑞々しさを残す花弁がその頬をくすぐった。
「綺麗だね」
時折、リヴァイも花の世話を手伝っていることを知っている。
この間など、バラを剪定できるような鋏を持っていないかと聞かれ、驚きを隠せなかった。
「ここにあるのはみんな、サクラとリヴァイの子どものようなものだね」
ハンジは花壇のすぐそばにあるベンチに座り、サクラを見つめた。
初めて彼女を見た時、“この子なら、リヴァイを救える”と直感した。
そして、見事にそれは当たった。
「サクラ」
振り返るその瞳に、言葉が詰まる。
そしてあらためて確認する。
自分にとっても彼女は特別な存在だった、と。
ハンジの脳裏に、この部下の異変に気がついた日のことが蘇る。
“ 殺してやる ”
他人に対して怒りや憎しみの感情を持たないサクラが初めて、目の前の巨人を“その対象”として捉えたのかと思った。
しかしそれは違った。
自分を慕ってくれていた後輩の死を目の前にして、サクラの怒りは自身に向けられていた。
一瞬にして筋肉を隆起させた身体、それを抱きかかえるハンジの手に感じた異常に速い脈拍。
呼吸が上がり、目は充血していた。
明らかに許容範囲を超えた体の変化だった。
しかし、あの時は確証が持てず、リヴァイに聞いてもサクラの体に変わったところは無いと言うので、そこまで深く追求しなかった。
それが今となっては悔やまれる・・・