【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
「待ってください、私ならいいんです! このまま抱いてください」
慌てて起き上がり、シャツを羽織ろうとしているリヴァイの腕を掴む。
「やめとけ、ペトラ。女としてずっと守ってきたものだろう。それに・・・」
自分が捧げて欲しいと願ったのは、たった一人の純潔。
その見返りとして彼女に与えたほどの愛情を、ペトラに注いでやることはできない。
何より、部下として・・・いや、自分を気遣ってくれる女性として、ペトラを傷つけたくない。
だから、本当に愛してくれる男に捧げろ。
「兵長!」
しかし、ペトラは引き下がらなかった。
掴んだ手を離さず、懇願するような瞳を向けてくる。
「・・・オイ、離せ」
「別に・・・処女を守ってきたわけではありません」
珍しく命令に従わないペトラに、リヴァイの表情が僅かに曇る。
「初恋もないまま訓練兵団に入り、今日まできてしまったというだけです」
「だとしたら、なおのこと好きな奴が出来るまでとっておけ」
「この先必ず出会いがあるとは限りません。それにこの身体は人類に捧げられたもので、もはや私個人のものではないから大丈夫です」
・・・嘘。
捧げるならば、リヴァイ兵長しかいないと思っていた。
でもそれを伝えれば、絶対に貴方は苦しむ。
ただでさえ深い悲しみの底にいる貴方を、これ以上苦しめるわけにはいかないでしょう。
「ならば・・・私をサクラだと思ってください」
「・・・・・・・・・・・」
「私をサクラだと思って、抱いてください」
今、この瞬間を逃したら、貴方と二人きりになる時間はもう永遠に訪れないような気がするから・・・
ここで引き下がるわけにはいかない。
リヴァイの腕を掴む、手。
その切ない温もりに、そっと目を閉じる。
“ リヴァイ兵長、大好きです ”
愛しい声。
でも、その姿はどこにもなく。
忘れ去られた窓辺の紅茶に、風もないのに波紋が広がった。
次の瞬間、激しくベッドが軋む。