【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
「リヴァイ兵長」
そばに歩み寄り、座る兵士長の背中からそっと抱き締めた。
ふわりと太陽の匂いが鼻をくすぐる。
初めて会った時にくれたマントと同じ匂いだった。
「サクラはきっと幸せでしたよ。だって・・・」
ごめんね、サクラ。
リヴァイ兵長に触れる私を、どうか許して。
「貴方にこれほどまで愛されている、ただそれだけで世界で一番幸せな女性です」
リヴァイが今、どのような表情をしているのか分からない。
ただ、わずかに体温が上昇したのを感じた。
「ペトラ・・・」
「もし、貴方を慰めることができるのなら・・・今夜はおそばにいさせてください」
「明日は壁外調査だぞ」
「だからこそです」
悔いのないように・・・
想いは届かなくても、愛しい貴方と一緒にいたい。
今度は少し息が詰まるような沈黙が流れる。
リヴァイの手にあったティーカップが窓枠に置かれた、その瞬間だった。
椅子が軋み、抱きしめていた腕が振りほどかれる。
気を悪くしたのだろうか。
「す・・・すみませ」
謝ろうとすると、言葉を途中で遮られる。
気づけば、逆にリヴァイに抱きしめられていた。
「リヴァイ兵長・・・!」
「悪い・・・」
上司と部下の関係でしかない。
恋愛感情もない。
それなのに求めるのは間違っている。
でも・・・
この手に残っている、冷たい身体を抱きしめる感覚にもう耐えられない。
人の温もりが欲しい。
「謝らないでください、兵長」
「・・・・・・・・・・・・」
情けないかもしれないが、忘れたい。
自分が一人、この世界で生きていることを・・・
「ペトラ・・・お前を抱いてもいいか・・・? 嫌だというならやめる」
夢にまで見たリヴァイの腕に抱かれ、どうして拒否できるだろう。
ペトラは静かに頷いた。
「嫌・・・ではありません」
「・・・・・・・・・・・・」
昔、自分は部下や仲間を亡くすと娼婦を抱いた。
殺すつもりで相手を犯しているうちに、思考力が鈍って自分が死なせてしまった命や、自分だけが生き残っている事実を忘れることができた。
それを見たハンジは、涙を流してくれた。
大事な命を失っても泣くことができない、自分の代わりに。
そして約束してくれた。
この世界を彩る存在を探してやると。