【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
夜空の下、紅茶を啜るリヴァイ。
それを見つめるペトラの瞳は幸せそうだった。
「エレンは・・・」
不意にリヴァイが口を開いた。
飛ばしきれなかったアルコールのせいか、それとも別の理由があるのか。
三白眼の端が赤く染まっている。
「サクラに惚れていたらしい。同じシガンシナ区出身だからな」
その名を聞いたのは、随分と久しぶりのように感じる。
何も言わずに次の言葉を待っていると、堰を切ったように兵士長は話し始めた。
「調査兵団としてエレンを守るのは、あくまで作戦のためだ」
「はい。私達は命をかける覚悟ができています」
「・・・だが、サクラはきっと怒っただろうな。エレンを人類のために利用しようとしているのだから・・・」
“ お願いです、リヴァイ兵長・・・その子は来年、必ず調査兵団に入ってきます。どうか、彼を守ってあげてください ”
サクラの願いを、自分は叶えてあげられていない。
人類のため、エレンを囮に使おうとしている。
サクラが知ったら、なんて言っただろうか・・・
「サクラは怒りませんよ。あの子の性格を誰よりも知っているのは・・・リヴァイ兵長ではありませんか」
「ペトラ・・・?」
「私、知っています。リヴァイ兵長とサクラが愛し合っていたこと」
「・・・・・・・・・・・・・」
半分ほど残った紅茶が、ティーカップの中で揺れた。
リヴァイ兵長・・・
“あの日”から、貴方の心は虚無感で溢れている。
この世界を守ろうとしているけれど、愛していないことがよく分かる。
真っ白な角砂糖がブランデーで染まっていったように。
貴方の瞳の周りは、流れ落ちることのなかった涙が溜まり、黒く染まってクマとなっている。
静かな部屋に、椅子が軋む音。
背もたれにかけたリヴァイの左腕がピクリと動いた。
「・・・だが、俺はあいつを幸せにしてやれなかった・・・」
「リヴァイ兵長・・・」
「あいつを守ることができなかった・・・何が人類最強だ、情けねぇ」
「・・・・・・・・・」
ペトラは胸の高鳴り感じた。
初めて・・・リヴァイが自分の前で、いや、誰かの前で気持ちを吐露している。
ブランデー入りの紅茶が・・・役にたったのだろうか。