【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第4章 Geranium
「あの新兵、いったい何が危険なんだ?」
「んー?」
ハンジはエルヴィンに提出する報告書をまとめるのに忙しいようだ。
生返事しかよこさない事に少しイラつきながら、もう一度質問し直す。
「だから、あのサクラって新兵は何が危険なんだ?」
「え?サクラが危険?なんだそれ」
「・・・てめぇが言ったんだろ。巨人にとっても、人類にとっても危険な野郎だと」
「あはは、危険だとは言っていないよ。“危うい”って言っただけだ」
は?
同じことではないのか。
メガネを顔ごと蹴り飛ばしてやろうか・・・と一瞬、本気で思った。
しかし、直後にハンジが複雑な表情で微笑んでいることに気がつき、脚を振り上げるのをやめる。
「サクラを私の班に配属させるよう、エルヴィンに頼んだのは私自身だよ。危険な子をわざわざ側に置くわけないでしょ」
「腹を掻っ捌いて、解剖でもするつもりか?」
「それはきっとリヴァイの仕事になるんじゃないかな」
「・・・?」
ハンジは、ペンを置いて窓の外を見た。
ここから巨人を繋いでいる、特設実験場を見下ろすことができる。
「そうだね。今まではあまりサクラに目立った仕事をさせなかったから、次の実験ではリヴァイにもわかるようにする」
「俺が鈍感な馬鹿だと言いてぇのか」
「いや・・・リヴァイもきっと気がつくと思う。あの子が訓練兵だったころに私が抱いた違和感に・・・」
リヴァイは黙ったまま、巨人を見つめているハンジを眺めた。
なんとなくだが・・・
ハンジが多くを語らないのは、リヴァイ自身のためだと思っているような気がした。
エルヴィンといい、ハンジといい、隠し事をされるのは気に入らないが、今はそっとしておいた方がいい。
そう、判断した。