【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第4章 Geranium
巨人の実験は、その日の午後から始まった。
調査兵団本部の中庭に特設された実験場に集まったのは、ハンジ、モブリット、リヴァイ、そしてサクラだった。
ハンジはまず、巨人に名前をつけるところから始めた。
その方が愛着が沸くからだと言っていたが、リヴァイには到底理解できなかった。
巨人は殺すもの。
ペットのように可愛がるなんて正気の沙汰じゃない。
「君はヨアヒムだよ。よろしくね」
リヴァイは木製の椅子に座りながら、ぼんやりとハンジやモブリットを眺めていた。
そして、2人の後ろに立っているサクラに目をやる。
雑用をしたり、実験結果を記録したりしている姿には、特に変わったところがない。
ごく普通の若い兵士だ。
こいつが、何だっていうんだ。
ハンジはともかく、あのエルヴィンまで一目置いているというのが不思議だ。
「わぁ、近づきすぎですよ、ハンジさん!!」
「大丈夫だよね、ってウォ!!もうちょっとで噛まれるところだったね」
「ハンジさん!!死にたいんですか?!」
モブリットとハンジのやりとりは、まるでふざけているようにしか見えない。
・・・馬鹿馬鹿しい。
巨人に話しかけて何になる。
意思の疎通ができないことは、何十年も前に確認済みだ。
それから数日間、毎回内容は微妙に違えどリヴァイにとっては不毛としか思えないような実験が続いた。
巨人に話しかけたり、
体に槍を突き刺したり、
皮膚の採集を試みたり、
人間以外の肉を口にねじ込んでみたり。
しかし、目立った成果は得られないように見えた。
「おい、ハンジ」
「なに?」
たまたまハンジの書斎で二人きりになり、リヴァイは気になっていたことを聞いてみた。