【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
まさか・・・
まさか、貴方は私を・・・?
ペトラの澄んだ茶色の瞳が大きく開く。
「ペトラ・ラル・・・俺はお前を指名する」
「・・・!」
「俺の班に入るために必要なことは・・・俺を信じることができるか、だ」
その言葉を言った瞬間、リヴァイは苦しそうに表情を歪めた。
何か思い出があるのだろうか。
しかし、その理由を尋ねることができなかった。
何故なら・・・
「ペトラ・・・? 何で泣いてる」
ペトラの頬にはその時、大粒の涙がつたっていた。
「あ・・・すみません・・・」
「・・・嫌なら辞退してもいい。遠慮するな」
「いいえ! これは・・・嬉しいんです・・・」
もう少しで嗚咽をあげてしまいそうになるのを必死で堪えながら、胸元に拳を当てて敬礼をする。
重要な任務のために選ばれたことが嬉しいのではない。
今、とても大きな悲しみに一人で耐えているリヴァイを、側で支えてあげられることが嬉しかった。
「ずっと・・・貴方に仕えることを目標としてきました」
「ペトラ・・・」
「謹んでお受けいたします」
「・・・・・・・・・・・・」
今流れている涙は、自分が拭ってやるべきなのだろうか。
右手を出しかけて、やめる。
リヴァイはもともと躊躇なく他人の涙を拭うことができる人間ではない。
その潔癖すぎる性格のせいだ。
この手で躊躇なく拭うことができた涙は、たったひとつ。
それはもう二度とこの世界に零れ落ちることはないだろう。
「・・・ありがとう」
リヴァイはペトラの涙を拭ってやる代わりに、ポツリと感謝の言葉を口にした。
それが、自分が指名したことで死なせてしまうかもしれない部下に対する、精一杯の優しさだった。