【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
第一兵舎の二階、その一番端の部屋。
お茶を持っていく時は何も思わないが、こうしていつもと違う時間にここへ来るとどうしても胸がざわつく。
数カ月前に偶然、リヴァイとサクラが性行為に及んでいるのを見てしまってからずっと。
でも、今となってはそれも悲しい記憶でしかない。
「・・・・・・・・・・・・」
どうして自分はあの光景を目撃しなければならなかったのだろう。
リヴァイへの恋心からそう思っているのではない。
あの光景の中で愛し合っていた二人のその後を思うと、悲しくならずにはいられない。
きっとその気持ちが、そう思わせているんだ。
「ふう・・・」
深呼吸を一度してから、トントンとノックする。
「入れ」
名乗らなくても、ドアの叩き方でペトラだと分かったのだろう。
中から聞こえてきたリヴァイの声は、いつもと同じく抑揚のないものだった。
「失礼します」
ドアを開けると、兵士長は机に肘をついて座っていた。
窓は固く閉じられており、白いカーテンは重そうにピクリとも動かない。
あの時そこでサクラを抱き、愛おしそうにキスをしていたソファーには、カーテンと同じ色の布に巻かれた“板”があった。
「・・・・・・・・・・・・」
第55回壁外調査の数日後から、ずっとそこに置いたままになっている。
形と大きさからして絵画のようだが、飾るつもりはないのだろうか。
しかし、その存在を忘れたわけでもないのだろう。
時折位置が微妙に変わっているし、埃や汚れがまったくない。
それはただ静かに、リヴァイの執務室のソファーを占領していた。
まるで、そのソファーには大切な思い出がたくさん詰まっているから、誰にも座られたくないみたい。
きっとこの絵だけがここに座ることを許されているのかもしれない・・・