【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
第56回壁外調査のその日。
人類にとっては、5年前のシガンシナ区の惨劇が蘇った日となった。
もはや過去のものと危機意識が薄れていた中、巨人がいつ襲ってきてもおかしくないということを再認識し、人々は恐怖に慄いた。
しかし同時に、いまだかつてないほどの“希望”が降って湧いた日でもあった。
それから1週間ほどたっただろうか。
調査兵団の幹部が、その“希望”の身柄を手にしようと尽力していたある日。
ペトラのもとに一通の手紙が届いた。
それは、娘の身を案じる父親からだった。
ペトラの実家は、トロスト区から東に位置するカラネス区にあるため、巨人による直接的な被害はなかった。
しかし、多くの駐屯兵が死ぬなど、兵団組織に大きな損害があったと聞いて心配したのだろう。
兵舎の廊下で 癖のある懐かしい文字を読んでいると、ふいに自分を呼ぶ声がした。
「ペトラ」
振り返ると、そこにいたのはエルド。
入団当時に同じ班だった縁で、なにかと行動を共にする仲だった。
しかし、今はリヴァイの班に所属している。
「どうしたの、エルド」
「リヴァイ兵長が、執務室に来るようにって言っていたぞ」
「兵長が?」
ペトラは慌てて壁にかかっている時計を見た。
まだお茶の時間には早い。
リヴァイから呼び出されるなど、今まで一度も無かったことで戸惑いを隠せなかった。
「急ぎじゃないみたいだぞ・・・あと、オルオにも用があるそうなんだが、アイツがどこに行ったか知ってるか?」
「さぁ。どこかで自慢話でもしているんじゃない?」
エルドには悪いが、リヴァイが呼んでいるとあってはオルオ探しを手伝うわけにはいかない。
一刻も早く執務室へ向かわなければ。
ペトラは兵士長の執務室へ向かって走った。