【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第4章 Geranium
「ところで、実験には例の新兵も参加させるのか?」
エルヴィンが顔の前で手を組み、伺うようにハンジを見る。
「例の新兵って、サクラのこと?」
「サクラ?」
リヴァイにとっては聞きなれない名前だった。
「ウォール・ローゼ南方面駐屯の102期訓練兵団に所属していた、サクラ・ブルームだ」
エルヴィンの説明を聞いてもピンとこない。
102期の顔は覚えているが、名前と一致させることができなかった。
「ハンジが随分とご執心のようだが、お前も前回の壁外調査で巨人の誘導係を務めた新兵と言えばわかるだろう」
「ああ・・・あいつか」
フリーダという友人の腕章を持ってきた女か。
「そういえば、何であのガキに俺の馬の片割れをやったんだ?」
「あれ、ダメだった?」
ハンジはキョトンとした顔を作ったが、リヴァイはすぐにそれを見抜く。
「てめぇ、いったい何を考えていやがる?」
「別に。ただ、期待しているだけだよ」
「期待?」
たかが6メートル級の巨人もまともに倒せないガキだ。
何を期待できるというのか。
すると、ハンジは複雑な表情を顔に浮かべた。
「あの子は“危うい”と思う。巨人にとっても、人間にとっても・・・ね」
「あ?」
リヴァイにはハンジの言っている意味が分からなかった。
どう見ても、危険な人物とは思えない。
「エルヴィンもそう判断したんでしょ?だから、私の班に入れることを許した」
「俺の期待は、ハンジのそれとは少し違うがな」
そして、エルヴィンとハンジは同時にリヴァイを見た。
「なんだ・・・?なぜ、俺を見る」
「なぜだろうね」
ハンジがふと笑う。
「それが知りたければ、リヴァイも巨人の実験に来るといいよ。あの子の危うさがきっと分かる」
「興味が無い」
すると、エルヴィンが口を開いた。
「お前には監視役として実験に参加してもらう。いいな、リヴァイ」
「・・・・・・・・・・・・」
穏やかだが威圧的な口調の時のエルヴィンには、何を言っても無駄だってことは知っている。
「・・・・・・分かった、お前に従おう」
リヴァイは忌々しそうに眉間にシワを寄せながらも、承諾した。