【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
それからしばらくはサクラの顔をまともに見ることができなかった。
リヴァイと恋人同士だということを、いったいどれだけの人が知っているのだろう。
サクラもまた、兵士からの尊敬を一身に浴びる人から愛されていることをひけらかさなかった。
ペトラは、サクラが誰よりも努力していることを知っているし、誰よりも優しいことを知っている。
きっとリヴァイと出会ったのも、恋心を抱いたのも、自分の方が先だろう。
でも、リヴァイに深く愛されているサクラを見て、怒りや嫉妬という気持ちは湧いてこなかった。
同時に・・・
なかなか受け入れることができなかった。
「サクラ」
一週間たったある日、ペトラが後ろから声をかけると、花壇で花の世話をしていたサクラは嬉しそうに振り返った。
「ペトラ!」
まさかリヴァイとの情事を見られていたなんて夢にも思っていないのだろう。
いつも通りの笑顔を見せる。
「最近忙しそうで、話す機会があまりなかったね」
「うん・・・そうだったね」
ずっと忙しいふりをしてサクラを避けていたことに胸が痛む。
でも、どんな顔をして会話をすればいいか分からなかった。
人前でのサクラとリヴァイは、あくまで部下と兵士長の関係。
それ以上にも、それ以下にも見えなかった。
でも、たった一度だけ。
リヴァイがペトラの目の前で、サクラへの愛情を示した瞬間があった。
それは、昼食後のお茶を持っていった時のこと。
開け放した窓から、同期達と談笑するサクラの笑い声が聞こえてきた。
すると、紅茶を飲んでいたリヴァイがふと窓の方に目を向け、優しく瞳を揺らした。
もし二人のことを知っていなければ、ただ窓の外を見ただけだと思ったかもしれない。
でもあの時、リヴァイは確かにサクラの声に反応していた。
そして、暖かい陽だまりの中で微睡むように、目を細めていた。
彼にとって、サクラはそのような存在なんだ。
自分が淹れた紅茶よりもずっと、ずっと心が休まるんだろう。