【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第18章 Till Death Do Us Part ※
「・・・お邪魔します」
今は巨人の領域となったウォール・マリア南区の小さな町に、民間人がいるわけない。
しかし、4年前はおそらく民家だったのだから、一応ノックをしてからドアを開いた。
キィー・・・
軋む音がして、前に広がるように大きく開く扉。
中の光景を見た瞬間、サクラの瞳が広がった。
「え・・・」
そこは、小さな礼拝堂だった。
ここから正面の祭壇までは10メートルあるだろうか。
通路の両脇には4人掛けの長椅子が、それぞれ縦に10脚ずつ並んでいる。
通路を照らすように、そのひとつひとつにロウソクが置かれ、小さな火がユラユラと揺れていた。
「・・・・・・・・・・・・」
光の、その先。
太陽が照らせば美しい七色に輝くだろうステンドグラスの窓を背にして、誰かが立っていた。
「リ・・・ヴァイ・・・兵長・・・・?」
どれほど厚い暗闇の中でも、不思議と貴方の姿だけは分かる。
その息遣いと体温が生み出す、僅かな空気の変化をこの体は喜んで感じ取る。
「サクラ・・・」
ふと祭壇の上に置かれたランプに火が灯った。
端正なリヴァイの顔が、柔らかい光に照らされる。
「リヴァイ兵長・・・どうしてここに?」
シンッと静まり返った礼拝堂。
埃臭さの中に、花の香りを感じた。
これは・・・ゼラニウム・・・?
視線を落とすと、可愛らしいピンク色のゼラニウムが長椅子を飾っていた。
「これは・・・」
ロウソクの柔らかな光。
優しい香りのゼラニウム。
静かで厳かな礼拝堂。
まるで、夢の中かと錯覚するほど幻想的な世界だった。