【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第18章 Till Death Do Us Part ※
ここは以前、製糸工場だったらしい。
しかし、ウォール・マリア崩落後は、調査兵団の補給拠点として野営に使われている。
石造りの、頑丈な建造物であることと、物資を保管しておく倉庫があるのが理由だった。
何度か来たことはあるが、荒れ果てたその様はどこか薄気味悪い。
団長や上官の使う作戦会議室は、一般兵士が寝泊まりする部屋とは離れた場所にあった。
「失礼します。第二分隊一班のサクラ・ブルームです」
調査兵の死を確認した場合、エルヴィンかその側近に報告するのが義務となっている。
サクラは敬礼をしてから作戦会議室に入った。
しかしそこにはエルヴィンの姿はなく、大抵はそこに控えているリヴァイ、ミケの姿もない。
団長の側近だけが一人、折りたたみ机で忙しなく書類を作成していた。
「第54回壁外調査にて、ネス班の兵士一名が亡くなりました」
そう言って同期の名前を告げると、側近はかけていた眼鏡を外し、深いため息を吐く。
「そうか・・・ご苦労だった」
今回は想定していたよりも被害が大きかったのだろうか。
手元のリストには、ぎっしりと兵士の名前と死亡状況が書き込まれている。
遺体のあるものは明日、できる限り壁内へ連れ帰らなければならない。
そのための荷馬車の配置や、編成の組み直しに追われているようだった。
「それでは失礼します・・・」
再び敬礼をしてから部屋を出ると、泣き腫らした顔の兵士とすれ違った。
彼もまた、仲の良い友人を亡くしたのだろうか。
肩を震わせながら作戦会議室に入っていく。
「・・・・・・・・・・・・」
サクラはガラスのはめられていない、壁に穴が空いているだけの窓から空を見上げた。