【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第18章 Till Death Do Us Part ※
馬が土を蹴る音。
流れる風が頬を撫でる。
今は無人となった村に差し掛かったところで、リヴァイは一つの建物に目を奪われた。
「・・・・・・・・・・・・」
それは尖った屋根の建物だった。
建てられてからかなりの年月がたっているのだろう、白い土壁には蔓草が覆い茂り、風見鶏は折れかかっている。
脇には鐘塔があり、錆び付いた鐘がぶら下がっているのが見えた。
何故だろう・・・
心が惹かれる。
「リヴァイ?」
リヴァイの様子に気がついたエルヴィンが速度を緩める。
「どうした? 建物の陰に巨人が潜んでいるのか?」
「・・・イヤ・・・そういうわけじゃねぇが、アレはなんだろうと思ってな」
指差した建物を見て、エルヴィンは首を傾げた。
あんなもの、ここに限らずウォール・ローゼにもたくさんある。
もちろん、地域によって風習が少しずつ違うから全部一緒・・・というわけではないが物珍しいものではない。
しかし・・・リヴァイのこれまでの人生には、まったく縁のないものだったのだろう。
エルヴィンはリヴァイに優しい碧眼を向け、微笑んだ。
「あそこは誓いをたてる場だ」
「誓い・・・」
まるで幼い子供が新しい言葉を覚えるように、リヴァイは首を傾げて繰り返した。
その意味が理解できなかったのではない。
今、自分にとってそれがとても大きな意味を成すように思えたからだ。
「誰かの運命が、自分の運命よりも重くなった時・・・その人物へ誓いをたてる場所だよ」
エルヴィンの言葉が、リヴァイの心に深く響く。
そして、愛しい笑顔が目に浮かんだ。
もし・・・
誓いをたてるならば・・・
自分には、彼女しかいない。
サクラ・・・
お前は・・・俺の誓いを受け取ってくれるか・・・?
「・・・・・・・・・」
リヴァイは古びた鐘塔から目を逸らし、巨人の脅威に晒されているだろう仲間のもとへ急いだ。