【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
「リヴァイ兵士長・・・私は、サクラさんを愛していました」
画家の告白は、確かに耳に届いていたはず。
しかし、リヴァイは何も言わずに、ただサクラの笑顔を見つめていた。
羽を捥がれて飛べない鷲が、地べたに這い蹲りながら太陽を見つめる・・・
そんな瞳だった。
「私は・・・絵を描くことしか能のない男です・・・だから・・・こんな形でしか私は愛情を表現することができなかった・・・」
でも、完成した絵を一番見て欲しい人はもう・・・いない。
結局、サクラは一度として自分の絵を見たことは無かった。
何故・・・世界はこんなにも残酷なのだろうか・・・
「・・・・・・・・・・・・」
涙が止まらない。
閉めきった執務室で、画家は子供のように泣きじゃくっていた。
どのくらいそうしていただろう。
「おい・・・」
ようやくリヴァイが画家の方を振り返る。
そして、二枚目の絵を差し出した。
「これは、お前のものだ。持って帰れ・・・」
「・・・え・・・?」
突然のことに、画家は泣くのも忘れて顔を上げた。
「いけません、お金も頂いていることですし・・・」
「金のことは気にするな・・・それに・・・」
リヴァイは瞳を揺らしながら、絵の中のサクラを見つめる。
「このサクラの笑顔は、俺ではなくお前に向けられたものだ」
その時、画家の脳裏にサクラの声が蘇った。
“ ・・・私は、貴方を想って見つめることにします ”
あの言葉は本当だったのか・・・
自分は・・・一瞬でも彼女の視界を独占することができたのか・・・
「だから、この絵は俺ではなく、お前が持っているべきだと思う・・・」
そして、もう一枚の方に視線を落とす。
「俺のサクラは・・・ここにいる」
その声はとても優しく、そして悲しく。
限りない愛情が込められていた。