• テキストサイズ

【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love




最初に顔を出したのは、幸せそうに寄り添うリヴァイとサクラの絵。
多彩な色を使わず、淡く柔らかい色と陰影で微睡む男女を表現していた。


「・・・・・・・・・」

固く口を閉ざしたまま、じっと絵を見つめるリヴァイ。
何を思っているのだろう。
俯き、両腕は力無く体の横で垂れていた。

絵の中のリヴァイも表情は乏しいが、その両腕は力強くサクラを抱きしめている。


「・・・・・・ッ・・・」

何か言いかけたのか、首から浮き出ている喉仏が微かに動いた。
それから数秒後。


「・・・・・・とても気に入った・・・ありがとう・・・・・・」


それは消え入りそうな声だった。
必死の思いで腹の底から絞り出すように言ったのだろう。
苦しそうに顔を歪め、唇は震えていた。


画家は、そんなリヴァイを前にして金縛りにあったように動けなかった。
聞きたいこと、確かめたいことはある。
でも恐ろしくて、それを聞くことも、確かめることもできなかった。


沈黙のまま、リヴァイは二枚目の絵の包みを解く。
一枚目よりも一回り小さい油絵。


それを見た瞬間、リヴァイの両目が大きく開いた。


「サクラ・・・」


そこには“桜色”の薄布を身に纏い、柔らかな笑顔を向けている彼女の姿が全面に描かれていた。
頬を微かに赤くそめ、白い歯が除く口元は今にも動き出しそうだ。


「桜の花だな・・・」


リヴァイは震える手で、サクラの肩にかかっているストールに触れた。


“ 見ることができても、できなくても・・・私にとって何よりも大事な花です ”


ああ・・・それはリヴァイにとってもそうだったのか。
まるで赤ん坊の肌に触れるように優しく撫でている。


「サクラさんは・・・」


いつしか画家の目から一筋の涙が零れていた。


「リヴァイ兵士長に愛されて、幸せだと言っていました・・・」


もう聞くまでもない。確かめるまでもない。


「貴方に救われたと言っていました・・・」


あの、天使のような微笑みはもう二度と・・・

二度と見ることはできないのだ。


「命尽きるまで貴方の側にいられる・・・これ以上の幸せはないと言っていました・・・」


泣くことができないリヴァイの代わりだったのだろうか。
画家は堪えようともせず、涙を流す。



/ 781ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp