【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
ドクン・・・
ドクン・・・・・・
脈拍が上がっているのに、体温は下がっていくようだ。
何故・・・
サクラの直属の上官はこんなにも悲しそうに花壇を見つめている・・・?
何故・・・花壇の花は枯れているんだ・・・?
「サクラ・・・さん・・・!」
画家はハンジに礼を言うのも忘れ、リヴァイの執務室へと急いだ。
嫌な予感がする。
まさか、まさか・・・!
静まり返る兵舎
忘れられた花壇
空虚感漂う上官
これらが示している答えは、画家にとって一番受け入れられないもの。
「そんなわけない・・・! そんなことがあるはずもない!!」
建物の階段を駆け上がり、ハンジが教えてくれた部屋に辿り着く。
そして、震える手でドアをノックした。
「・・・入れ」
ドアを叩いた人間が誰かなんてどうでもいいのか。
中から聞こえた静かな声は、確かめようともせず中に入ることを許す。
「失礼します」
ドアを開けると、リヴァイはデスクに座っていた。
机の上には、一口も飲んだ形跡がない冷め切った紅茶が置いてあるのみ。
そして、心無しか疲れているようだった。
「ああ・・・あんたか・・・」
そう呟き、画家が抱えている包みを見て眉をひそめる。
「それ・・・完成したのか・・・」
存在を忘れていたわけではないが、待ちわびていたわけでもないといったようだった。
「・・・わざわざ届けてくれたんだな・・・すまなかった」
リヴァイはゆっくりと立ち上がると、画家の方に歩み寄った。
そして白い布に包まれた絵を受け取る。
「あ、あのっ・・・サクラさんは・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
リヴァイは表情一つ変えなかった。
否、能面のようにまったく表情が無かった。
あれほど物を語っていた瞳すら、今はまるで底無しの穴のように虚無感で溢れている。
この世界に何も興味が無く、むしろ忌み嫌っている、そんな感じだった。
「サクラさんにも完成した絵を見ていただきたいのですが・・・」
あれほど楽しみにしてくれていたのだから。
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、リヴァイは何も答えなかった。
絵を日当たりの良いソファーに置くと、ゆっくりと包みを開く。