【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
すると突然、背後から声がした。
「誰だ?」
画家はギクリとそちらの方を振り返った。
背の低い植木でここからは死角となっていたベンチに、スラリとした体躯の兵士が座っている。
まるでずっと花壇と向き合って、話をしていたかのようだ。
「・・・君は兵士ではないね・・・部外者は立ち入り禁止だよ」
背中を丸めたまま、メガネの奥から虚ろな瞳を画家に向けてくる。
髪がボサボサなのは容姿に無頓着なのか、それとも・・・
「あの、私は画家です。注文の肖像画を届けにきました」
そう言うと、兵士は力無く溜め息をついた。
「ああ・・・ああ、そうだね。肖像画を描いてもらうのが流行っていると聞いたな」
「はい。それで、あの・・・リヴァイ兵士長か、サクラ・ブルームさんにお会いしたいのですが・・・」
「・・・!!」
リヴァイとサクラの名前を聞いたその兵士は、突然顔色を変えて立ち上がった。
「誰に・・・会いたいって?!」
その剣幕に、思わず後ずさりをしてしまう。
「す、すみません! リ、リヴァイ兵士長か、サクラさんに・・・」
すると、その兵士は画家が抱えている包みに視線を落とし、崩れ落ちるように再びベンチに座った。
「・・・それは・・・リヴァイと・・・サクラの絵なのかな・・・?」
「はい。1カ月前に私のアトリエで描きました」
「そう・・・」
怪しい者ではないことを証明するために絵を見せた方がいいか。
画家が迷っていると、兵士はようやく口元に微かな笑みを浮かべた。
何故かとても悲しそうに見える。
「驚かせてすまなかった・・・私はハンジ・ゾエ。サクラの直属の上司だ」
ハンジ・ゾエ・・・
聞いたことがある名前だ。
確か、巨人に異常なほど興味を示している奇人だと、街の人が噂していた。
しかし、目の前のこの人は、とてもそうは見えない。
「リヴァイなら執務室にいるだろう・・・あの正面の建物の二階だ・・・」
細い指先で、向かいの建物の右端をさす。
そこがリヴァイの執務室なのだろう。
しかし、窓が閉まっていて、中に人がいるかどうかはわからなかった。
「そこに行けば・・・サクラにもきっと・・・・・・」
ハンジはそれ以上は何も言わず、視線を花壇へと戻した。