【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
調査兵団の帰還から三日後。
二枚の絵が完成した。
一枚は、真っ白な世界で愛し合う男女が寄り添う姿。
もう一枚は、東洋の面影を残す女性が、桜色のストールを身に纏って優しく微笑んでいる姿。
どちらも、渾身の作だった。
きっとサクラは喜んでくれるに違いない。
リヴァイも気に入ってくれるだろう。
画家は心を弾ませながら、二枚の絵を抱えて調査兵団を訪ねた。
もう何度も来たことのある建物だ。
馴染みの顔もいる。
「・・・・・・・・・」
しかし、何故だろう。
雰囲気がいつもと違う。
何処か重苦しい空気が漂っている。
第55回壁外調査から日が浅いからか?
そんなに多くの兵士が死んだのだろうか。
帰還する調査兵団を出迎えに行かなかった画家は、今回の損害がどれほどのものかわからなかった。
とりあえず、リヴァイかサクラに会わなくては。
誰かに二人の所在を聞いても良かったのだが、画家の足は自然と中庭へ向かっていた。
もしかしたらサクラが花壇にいるかもしれない。
そう思っていた。
しかし、目に映ったのは前に見たのとは違う景色。
「あれ・・・」
“コ”の字型に建つ兵舎の真ん中に位置する中庭。
人間の背丈ほどの木が生え、所々にベンチが置いてある。
中央には噴水、そして端にサクラが世話をしていた花壇。
全ての位置関係は何も変わっていない。
なのに、この違和感はなんだ・・・?
もう一度、中庭を見渡した瞬間、その理由が分かった。
「花が・・・枯れている・・・」
この前来た時は、少ないながらも花壇に花が咲いていた。
しかし、今は全て枯れ果て、土が渇いている。
茶色く変色した花の残骸は、まるでその存在を忘れられたかのように頭を垂れていた。
サクラは・・・あんなに大切に花の手入れをしていたサクラは、どうしたのだろう・・・?
こうなるまで彼女が放っておくはずがない。
心臓が、嫌な音をたてた。
震える足で花壇に歩み寄る。