【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
それから、1カ月もの間。
画家は絵を描くことに没頭した。
食事や睡眠の時間さえ惜しんで、筆を滑らせていた。
絵の完成が間近に迫ったある日のこと。
窓の向こうから、調査兵団がトロスト区の外門に集合していると噂する声が聞こえてきた。
ああ、サクラさんが言っていた第55回壁外調査・・・
今日だったのか。
いつもなら、スケッチブックを掴んで一目散に外門へ駆けつけていた。
しかし、その日は違った。
画家は暗いアトリエの中で、サクラの笑顔と向き合っていた。
おそらく、今頃は馬に跨り、緊張した面持ちで門が吊り上げられるのを待っているのだろう。
「サクラさん、どうかご無事で・・・」
唇にコーラルピンクの色を足しながら、絵の中の愛しい人に呟く。
サクラと出会ってから初めて、壁外調査の見送りに行かなかった。
そして数日後、調査兵団が帰還したと聞いても、その行列を見には行かなかった。
イーゼルに向かい、自分のできることに専念した。
そうしなければならない、無性にそんな気がしていた。
しかし、画家はこの時の選択を、一生後悔することとなる。