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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第17章 Painting Of Love




画家は椅子から立ち上がると、棚から新しいハンカチを取り出し、サクラに歩み寄った。
そして、頬を伝う涙をそっと拭いてやる。

「サクラさん・・・私は、ただ絵を描くこと・・・それだけしか能が無い男です」
「・・・・・・・・・・・」

炭と絵の具で汚れた画家の手が、柔らかい頬を撫でた。


「・・・片隅でもいい・・・描くことでしか愛情を示すことができない憐れな男も居たことを・・・心のどこかに留めておいていただけませんか・・・?」


貴方を一目見た時から・・・
ずっと描きたいと思ってきました。


「それだけで・・・私も幸せです」


実ることの無い恋。
でも、彼女に出会えて本当に良かった。

おかげで、画家として生涯誇れるような絵を描くことができる。


すると、柔らかい両手が画家の頬を包んだ。
生まれて初めての感触に、緑がかった瞳が大きく開く。

キィ・・・と揺り椅子が軋む音。

右の頬にサクラの息遣いを感じたかと思うと、優しい唇の感触を覚えた。


「あ・・・」

思いも掛けないキスに言葉を失っていると、目の前のサクラが微笑む。


「決して忘れません。とても才能溢れる画家がいたことを・・・そして、その方に絵を描いていただいたことを・・・」


その笑顔はリヴァイにではない。
間違いなく、画家に向けられていた。


「ありがとうございます、サクラさん・・・」


もうこれで充分だ。
サクラへの想いは通じなくても、どこかに残っていればそれでいい。
自分の絵を見た時に、ちらりと思い出してくれる程度でいいんだ。

画家は静かにイーゼルに戻ると、再び手を動かし始めた。




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