【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
真っ白なキャンバスに、輪郭が描かれていく。
とにかく全てを詰め込むつもりだった。
自分の想い、
サクラを描ける喜び、
リヴァイへの感謝。
不思議だ。
木炭を持つ手が止まらない。
まるでどう描けばいいのか、頭ではなく体が知っているようだ。
才能が、後から後から満ち溢れてくる。
「サクラさん・・・サクラさん・・・」
画家は途中、何度もサクラの名を呼んだ。
その度に優しい声で返事をしてくれる、ただそれだけでたまらなく幸せだった。
だからこそ、思う。
「リヴァイ兵士長は本当に幸せな人ですね」
「え?」
「サクラさんのような方に愛されて・・・本当に幸せな人だ」
自分の気持ちに気づかれないよう、なるべく何でもないことのように言う。
するとサクラは桜色のストールに視線を落とし、その瞳を揺らした。
「いいえ、本当に幸せなのは私です」
きっと今、彼女の目には黒髪の兵士が映っているのだろう。
口元に笑みが浮かぶ。
「リヴァイ兵長に出会って、私は救われました」
命を二度、助けてもらった。
一度目は、初めての壁外調査。
私が巨人を倒し損ねて食われそうになっていると、あの人は稲妻のように現れて一瞬のうちにその巨人を倒してしまった。
二度目は、後輩を殺した時。
自責の念にかられて自殺しようとした私を、あの人は自分も傷つくことを厭わずに止めてくれた。
それ以外にも数え切れないほど、彼に守られてきた。
「リヴァイ兵長は、私の醜い部分、汚い部分まで目を逸らさず、大切にしてくださる」
初めて自分のために命をかけてくれた、
初めて身を捧げた、
初めて怒りをぶつけた、人。
「そして・・・この命が尽きるまでお側にいさせてくれると、何があっても私を離さないと、誓ってくれた・・・」
その時の光景が蘇ったのだろう。
サクラの両目から大粒の涙が零れる。
「これ以上の幸せはありません・・・」
彼女は本当にリヴァイを愛している。
また、同じだけ・・・いや、それ以上の愛情に包まれている。
だから、二人寄り添う姿があれほど美しいと思えたのだろう。