【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第17章 Painting Of Love
この色のストールを選んだのは、サクラに似合いそうだと思ったからだ。
だけど、ここまで嬉しそうにしてくれるなんて・・・
「そう、肩に緩く羽織って・・・胸元がようやく見える程度に」
木の揺り椅子にクッションを置き、そこに座らせる。
リラックスした姿勢をとってもらうと、ストールの裾は陰部を隠すように配置した。
「どのような表情でいればいいですか?」
「そうですね、柔らかくて幸せそうな顔がいいですね・・・」
きっとその表情のサクラを、リヴァイは望んでいるだろう。
「難しいかもしれませんが、私をリヴァイ兵士長だと思って見つめてください」
「・・・・・・・・・・・・」
サクラは口元に手を当てて、少し考え込むような仕草を見せた。
当たり前だ、画家とリヴァイは似ても似つかぬ容姿。
この貧相な外見に、あの人類最強の兵士を重ねろと言っても難しいだろう。
“やはりいつも通りにしてください”、そう言いかけた時だった。
「いいえ・・・私は、貴方を想って見つめることにします」
「え・・・わ・・・私を・・・?」
あまりの驚きに喉がひくつき、ようやく声に出せたのはそれだけだった。
しかし、サクラの方は納得のいく答えなのだろう、落ち着き払っている。
「リヴァイ兵長が望んでいるのは、“貴方の目に映る私”を描いてもらうこと・・・」
「・・・・・・・・・」
「だから、私もここにいない兵長ではなく、貴方を見ます。きっとそれが兵長の望んだことだと思うから・・・」
「サクラさん・・・」
彼女を知って数カ月。
壁外調査に行く調査兵団を、見送りに行き続けた。
そして、壁外調査から戻ってくる彼らを、出迎えに行き続けた。
馬上で出立を待つ時も、負傷した兵士に肩を貸している時も、サクラの瞳が画家を映すことは無かった。
それが今、自分を見つめてくれるというのか。
優しい微笑みを浮かべながら。
リヴァイ兵士長・・・
貴方はもしかして、私のためにこの依頼をなさったのか・・・?
「綺麗です・・・」
感嘆のため息が漏れる。
愛情を持って自分を見つめるサクラ。
たとえそれが仮初めのものだとしても・・・
画家は、幸せだった。